Ap Star Consulting Contact
Fuji's Blog

インドネシア国際オートショーに見る自動車メーカー攻防戦(5) -欧州プレミアムカーとレクサス 2017_08_19

公開日: 2017年8月19日

インドネシア国際オートショーに見る自動車メーカー攻防戦(5) -欧州プレミアムカーとレクサス -2017_08_19-


<写真:BMWインドネシアによる国産車5シリーズの記者発表>


 

<まとめ>

◆ベンツ、BMW、アウディ。欧州プレミアムカー・ビッグ3のインドネシアでの販売台数は合計しても年間僅か6000台レベル。これにレクサスなどを加えてもインドネシアでのプレミアムブランドの合計は年間8000台にも満たない。

◆しかしながらオートショーはインドネシアという将来の有望市場でのブランドアピールの場と捉えられているようで、各社本国の支援のもと大きな展示スペースを確保し力の入った展示を繰り広げている。

◆ BMWは新モデルの『5シリーズ』の記者発表を実施。

◆対抗する日本ブランドであるレクサスもコストをかけた展示やイベントを展開。新ラグジャリークーペの『LC』の発表を行った。

◆ベンツとBMWはアセアン各国で現地組み付けを行っており、輸入車に対する何らかの税制の恩典を受けている。一方、全て日本からの輸入であるレクサスやアウディはコストハンディが大きいためプレミアムカー市場の中での量販モデルの販売が困難な状況だが健闘してはいる。



<まだまだ少ないインドネシアのプレミアムカー>


インドネシアのベンツ、BMW、アウディ。欧州プレミアムカー・ビッグ3のインドネシアでの販売台数は合計しても年間僅か6000台レベル。これにレクサスなどを加えてもインドネシアでのプレミアムブランドの合計は年間8000台にも満たない。


インドネシア自動車市場での一定の存在感はあるものの、販売量としてはタイ、マレーシア、シンガポールの半分以下の底レベルで見劣りはする。


インドネシアの富裕層や超富裕層の数はこれらの国よりも確実に多いと思われ、かつプレミアムカーの値段(税込)も周辺国と比較しそれほど高いレベルではない…のに、である。


富裕層の大部分を占める華僑は歴史的にインドネシアではプリブミ(いわゆるマレー系のもともと住んでいた人たち)の嫉妬の対象になってきた。これまで政変や暴動のたびに潜在的に眠っていたそれが群衆心理となって爆発し、なんども酷い目にあってきた。従い(少し大袈裟な表現だが)華僑・華人はインドネシアでは金持ちぶった目立ったことはせず、資産をインドネシアにはあまり持たず、シンガポールやオーストラリアに蓄財し、かついつでも逃げる準備を考えていた。


全員がそうではないが,『インドネシアはお金を稼ぐ場所、資産は海外、オーストラリアなどの永住権をとっていつでも海外に…』と言う富裕層/超富裕層が多かった。


しかしながら、これまで華僑/歌人を経済、財政の原動力としてのみ捉えていたふしのあるインドネシアが、ここ10年から15年くらいで国家として華僑を政治参加させる方向に舵を切った。治安も安定化の一途を辿り、また海外資産の国内再移転の推進策(具体的には戻せば出処を問わず、税の優遇を与える)が展開されるようになると、華僑達もインドネシアをついの住み家と考え、蓄えた資産をインドネシアで子々孫々のため自分により良い生活のためにもっと使おうと考え始めた。


多少目立ってもいい車に乗りたいという意識が富裕層、超富裕層の間である程度定着したのではないだろうか?


プレミアムカーはこれからも安定的に伸びる市場と思われる。



<各社各様のブランド戦略とインドネシアへのアテンションをこう読む>


商用車展示館と乗用車展示館の間に2階が会議室となっている小振りの建物がある。その一階は全て BMWとミニの展示スペースとなっている。グループの専用エリアで昨年からBMWの定位置である。


実はBMWでは世界中の販売店のショールームも含めて『展示車両は全て同じ方向を向いて並べること』がメーカーから義務付けられている。ブランドアイデンティティ表現の具体的な規則として、である。

オートショーの展示も同様。3、4、5、7シリーズやXシリーズが見学者の導線に迎合せずに並べられている。


8月10日のメディアデーでは新しい5シリーズの記者発表がBMW100%のインドネシアのディストリビューターのトップのもと行われた。ステージには、インドネシアでのマルチブランド向け組み付け専門会社『ガヤ・モーター』のトップも居て、この5シリーズが『ローカル・メード』であることがアピールされていた。輸入車であることはもはやブランド形成上の優位点ではないようだ。


インドネシアではまだ普及に時間がかかる電気自動車もちゃんとステージ上に展示されていた。








一方、同じ欧州プレミアムブランドであるメルセデスとアウディは乗用車館の入り口付近に大きなスペースを確保し陣取り、それぞれの商品ラインアップをきちんと展示している。販売台数の少ないAUDIはセダン中心のラインアップをざっと上品に展示しただけだが、メルセデスはインドネシアの売れ筋であるSUVとセダン系のAMGを全面に押し出している。ブルーのジャケットのギラギラした目のセースマンがやけに多く、ブランドイメージ云々よりも『超高級車の展示即売会』の様相を呈していた。


そのメルセデスの通路を挟んだ反対側にはレクサスの展示ブース。インドネシアでのレクサスの最量販モデルであるRXや新モデルの豪華2ドアクーペLCなどが展示されている。

ロングドレスのコンパニオン、日本の庭園もどきのデザインのVIPルーム、インドネシアの伝統芸能のようなイベントの実施など、ブランド戦略上いかがなものか…と思わせる要素も目についた。


スピンドルグリルなど統一デザインとレクサス事業のトヨタ部門からの切り分けによってここ数年で商品のアイデンティティはトヨタ車と比べ随分明確になり世界的にブランド力もついてきた。しかしながら、ショーなどで目に見えるものはローカルの自由度が強すぎて、ブランドイメージの拡散を招いている。もう少し『レクサスインターナショナル』のブランドコントロールが必要な領域ではないだろうか?(あくまで個人的偏見に基づく意見ですが)



<現地組み立ては量販に必須?>

 BMWもメルセデスもインドネシアやタイ、マレーシアなど東南アジア各国でレクサスの倍以上の販売台数をこなしているが、その理由は現地組み付けを行なっていることに他ならない。現地組み立てといっても、トヨタ、ダイハツ、本田のようなメーカーがインドネシアやタイでやっているようなエンジンやボディーパネルまで国産化しかつ国内の部品メーカーを育成までやっているような高度国産化ではなく、本国(あるいは中国)からほとんどの構成部品を各国に持ちこんでそのまま組み付ける CKD方式である。

プラモデルのように、『箱を開けたら10台分の部品が全て詰まっていて。そのまま組み立てることができる』といったイメージである。


厳密に言うとこの方式でアセアン域内生産車として認めるべきか大変疑問なのだが、少なくとも現在インドネシアではこの方式でBMWもメルセデスも完成車のような高い関税を払わなくてもすんでいる。


コストメリットを生かし、BMWもメルセデスも高マージン体質を享受でき、販売店も経営が成り立っていると思われる。両ブランドともインドネシアに20店もの販売拠点があって昨年の販売台数はそれぞれ約4000台と2500台。一拠点あたりの平均販売台数はそれぞれ166台、125台となる。これでペイできていることになる。


一方、全て日本からの輸入車であるレクサスは 日イのFTA(関税自由協定)締結後も関税を払っておりコストハンディを負っている。2007年のレクサスのインドネシア導入からすでに10年近くが経っているが、販売拠点はディストリビューター直営店に加え昨年独立系販売店が1店できたばかりの計2店のみ。昨年の販売台数1038台に対する一店あたりの販売台数は500台。効率的に頑張っていると言うべきか、コストが厳しいので販売店を増やすデメリットが多いと言うことであろうか。


同様の問題をタイやマレーシアで抱えており、レクサスは全量メイドインジャパンであり低価格帯での競争に入っていけない事情がある。両国ともブランドイメージは悪くないのだが量が稼げないため事業展開に制約があるといった悩みがあるようだ。

(中国も同様輸入車のみだが、未だに国産車不信感があって現在のユーザーからはレクサスは国産化しないで欲しいと言う意見もあるようだが)


そのレクサスも大市場インドで販売を開始するためのハードルをクリアするため、CKD生産(アメリカやカナダで生産実績のあるESとRX)を行うと言われており、アジア諸国での同様の対応ができれば、一挙にBMWやメルセデスとプレミアム市場で互角に戦えることになるかもしれない。


またレクサス同様アウディも現在インドネシア向けは輸入車のみ。しかしながらレクサスと違って中国で現地生産を行なっており、その気になれば中国からインドネシアや他国での組み付け部品の供給も可能だと思われる。



わずか年間8000台のインドネシアのプレミアムカー市場だが、アセアン各国との横並びで、少し気に止めておいたほうがいいと思われる。




最近の投稿
アーカイブ
カテゴリー
Copyright © 2016 AP Star Consulting All Rights Reserved.