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アジアおもしろクルマ事情 インドネシア編 第5回 バジャイ、アンコット、ベチャ 〜モビリティの民主主義の担い手?〜(シンガポール情報誌 アジアX4月号投稿)

公開日: 2018年4月20日

アジア独特の乗り物と言うと、タイの『トゥクトゥク』やフィリピンの『トライシクル』や『ジプニー』が有名です。地元の人達だけでなく我々ビジターにとっても乗り方のコツさえ覚えれば大変便利な移動手段ですね。インドネシアにも同じようにドアツードアの庶民の足である『バジャイ』という便利な乗り物があります。


4輪バジャイ

インドから来たバジャイ

インドネシアの首都ジャカルタ。幹線道路沿いに大きなオフィスビルや高級マンション、巨大ショッピングモールが立ち並び大都会の様相を呈しています。都市開発が進む中『カンプン』という日本の下町のような場所もまだ意外と多く残っていて、自家用車を持っていない庶民はこうした集落で町内の人たちと肩を寄せ合って暮らしているのです。道幅は狭く、バス停からも遠い。クルマの使用に限界のあるこうした場所ではバイクタクシーが入り込み大活躍していますが、それ以外にもいくつかの乗り物が混在しています。


しばらくぶりにそのカンプンを歩いてみると、これまで見たことのないピカピカの新しい乗り物を発見。日本の軽自動車の半分以下のサイズのブルーの小さなカワイイ車で、タイヤが一応4つ付いている。


色々と調べてみると、従来3輪車の『ベモ』と呼ばれているミニタクシーがモデルチェンジし装いも新たに4輪化したもの。インドから昨年輸入した乗り物でインド風の名前である『バジャイ(BAJAJ)』という名前がついています。


3輪バジャイとモナス

3輪の旧モデルもジャカルタをはじめとするインドネシアの各都市にはたくさん走っているのですが、元々はイタリアのPIAGIO社の製品をインドでライセンス生産していたものを1970年代に大量輸入したもの。それがそのまま40年以上も使われているわけです。バイクを逆さにして幌をかぶせたようなレトロなデザインはジャカルタのカンプンののんびりした風景にはよく似合っているのではないでしょうか。


『バジャイ』に乗ってみた

バス停付近で客待ちをしているこの新型の4輪『バジャイ』の運転手をつかまえて値段交渉をして早速乗ってみました。従来型の3輪車と比べると運転席には一応メーターがついていて、ハンドルはバイクスタイルではなく丸い。クルマらしい内装に変化していました。室内は大変狭い。後部座席は体を丸め足をおりたたまないと乗りこめずお世辞にも快適とは言えません。が、走り出してみると乾いたエンジン音が大変心地よく、車体が小さく軽いので狭い路地もスイスイと軽快に走ってくれてあっという間に目的地に着いてしまいました。多少窮屈なのは我慢しながらも、雨にも濡れずドアツードアで移動できる乗り物として、近距離移動には大変便利な乗り物という印象でした。


老朽化が進んで排気ガスを撒き散らし、車社会のスピードにはついていけず渋滞の原因になるとして評判の悪かったべモ。新4輪は排気ガスも多少改善されているようです。庶民目線で見るとまだまだ都市交通の一部を担えるのでないかなと感じました。


アンコットとベチャ

インドネシアにはこれ以外にも、小さな乗合バスのアンコットという乗り物があります。バス停やショッピングモール近くの溜まり場に止まっていて、こちらはカンプンをつなぐような中距離移動の乗り物として生き残っています。運転手との価格交渉が面倒くさく、エアコンも付いていない乗り物ですが、これが意外と便利で走行ルート内であれば停留所がなくても好きなところで降ろしてくれます。


さらには、地方都市などで残っている人力車の『ベチャ』。自転車の前方に2人乗りの座席を取り付けたもので、車の数も少なく時がスローに流れていた時代の遺物としてノスタルジーを感じる乗り物です。交通量が増えスピード感溢れる近代都市の路上では問題の多い乗り物になってしまったため、ジャカルタでは90年に道路整備とともに全面禁止されたのですが、密集地などではまだ生き残っているようです。


ベチャとアンコット(じゃかるた新聞より)

モビリティの民主化

インドネシアでは自家用車を買える人たちはごく一握り。近代的な公共交通機関が整備されていない中、それ以外の人々の移動手段はバイク。しかしながらバイクの運転をしない女性や子供、お年寄りのドアツードアの交通手段は限定されます。地下鉄やモノレール、整備されていく交通インフラや急激にビジネスを拡大するバイクやクルマの配車アプリ展開の中でも、庶民の居住区や集落、密集地での移動手段は必要で、こうした安価でレトロな交通手段は今後も残っていくのではないでしょうか。


ジャカルタの新市長は前述の人力車『ベチャ』を地域限定で復活させようとしており各方面からブーイングを浴びています。しかしながら近代化の波に乗り遅れている層への移動手段の確保、言い換えると『モビリティの民主化』を図ろうとしている、と見ることもできるわけです。

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